【広瀬隆雄氏】2020/2/29 ETFは市場急落の元凶なのか? 1987年の大暴落とメガニズムの違いについて

2021年5月8日

“じっちゃま”こと、広瀬隆雄氏によるYoutubeライブ議事メモ
2020年2月29日 ETFは市場急落の元凶なのか? 1987年の大暴落とメガニズムの違いについて

目次

はじめに

2020/2/28(金)の下げ原因はETFだった?

今日のテーマは「ETF」(上場型投資信託)です。先週のNW市場の大きな下げ、急落の原因は、ひょっとしたらETFじゃないかという意見があります。

思い出してみれば、1987年のブラックマンデー。あの時の大暴落は「ポートフォリオ・インシュアランス」と呼ぶ、先物主導の売りで引き起こされたとの解説がありますが、それとの類似性を指摘する人がいます。そのようなことについて話して見ようと思います。

まず、先週のNW市場の動きとして、DOW工業株価指数が-12%、S&P500 が -11%? NASDAQが-11%ということで、結構ひどいマーケットでした。リーマン・ショックのあった2008年10月以来かな?金曜の大引け1時間半前に、FRBが「経済を支援するために適切な行動に出ます」と声明を出しました。これは利下げを仄めかしてるに他ならないものですが、それでマーケットもちょっと戻って引けました。

ETFの売買代金が通常時の4倍を超えていました

先週の金曜日を見てて凄いなと思ったのが、S&P500に連動するETFで「SPY」というのがあります。アメリカ株をやってる人にはお馴染み・ポピュラーなETFですが、1日の売買代金が13.8兆円ということで、過去最高記録を塗り替えました。どの個別銘柄よりも売買代金が多かったです。ETF全体の2/28売買代金は、44兆円でした。これも通常の4倍くらいで凄い数字です。別の角度から問題を見ると、全ての株式売買高の中で、ETFが占めた割合が43%でした。普通だと25%くらいです。

で、素朴な疑問として、ひょっとしてETFが物凄く頻繁に取引された結果が、下げの元凶じゃないかと自然と疑問が湧きます。ETFそのものが全株式売買高の43%を占めてるのみに留まらず、ETFを構成している中身(株とか債券とかコモディティとか)の売買も、ETFがトレードされていることによって、トリガーされたのではないかと言われてます。

理由は、ETFはCreation (新しくETFを作る)と Redemption (ETFをキャンセルする)ということを繰り返しながら、ETFが影響している株価指数と、場のETF価格の乖離を小さくすることが通常は行われています。これが、そもそものETFの設計思想です。ETFは投資信託と違って、ファンドマネージャはいません。Buy Sideトレーダーもいません。投資会社が社内でチームを持ってて、売買指示を出してるワケでもないため、腕が良い・悪いとかも関係ありません。

そもそもETFは、どのように出来てるのか?

ETFがどのように出来てるかというと、まず「ETF、作りまーす」と発表します。次に「ETFの中身はこうなってます」ということを公に示します。これを「ポートフォリオ・コンポジション・ファイル」(銘柄リスト)と呼ばれます。そして、指数に連動するETFを上場させます。もし、指数とETF価格が乖離した場合、サヤ取りできるように銘柄リストに合わせて買って、信託銀行に届ければ、新しいETFを作ってくれる、あるいは、ETFをキャンセルしてもらうものです。

たぶん、こう説明しても分からないと思うのね(苦笑)だから、例えで説明します。ETF = 福袋と思ってください。その中に色々な物が入っているわけです。株価指数というものは、これらの個々で構成される指数です。ETFというものは指数と連動するようにした”器”です。すると、NW市場とかに器が上場しているわけだから、器の値段は勝手に動くし、現物も勝手に動くでしょう。両者の間で “乖離 (スプレッド) ” が生じる可能性があるんです。

ちゃんとついてこれてる?(苦笑)じゃあ、行くね。

指数よりETFが割高だった場合は、ETFは新しく作る

するとさ、仮にS&P500の水準に対して、SPYDが割高になったとする。その時、外部のAP(Authorized Participant:指定参加者)と呼ばれるサヤ取り業者(投資銀行とかヘッジファンドとか)が、場でついてる個々の株価とETFの値段のズレを逐次、コンピュータでモニターしてるんです。

そして、ETFが割高だとETFを空売りする→個々の銘柄の現物を買いに行ってバスケットに入れます。次に、現物バスケットを全部一纏めにして信託銀行の窓口に持ち込むんです。「これで、ETFを組成してください」って。すると、信託銀行がETF出来たよって渡してくれます。

割高の時に空売りした訳でしょう?安くなった時に買い戻さないといけない。それを今やりました。場で1つ1つ拾って、安い値段でETFを作ったんです。これによって空売りのケツ入れが出来るワケです。

誰があくせく働いてるかというとAP(信託銀行、ヘッジファンドなど)ですよね。つまり、ETF運用会社は何もしていない(笑)ETFの会社はポートフォリオ・コンポジション・ファイルを示してるだけなんですよ。これが、ETFの仕組みね。新しくETFが Creation される仕組みです。

指数よりETFが割安だった場合、ETFをキャンセルする

逆に、ETFがキャンセルされる仕組みもあるのね。

株価指数に対して、ETFが安く・ディスカウントで取引されてることもあります。するとまず、個別株が割高なワケだから、個別株をショートして、ETFを買う。そして、信託銀行に持ち込むんです。「このETF内の個々銘柄を取り出したいんです」って。信託銀行は「はい、わかりました。1個1個の構成銘柄を取り出しますから」って、現物株をもらうんです。それで、からっぽになったETFはポイっとします。ETFは存在しなくなったということです。

そういうことを繰り返しながら、段々とETFの純資産が増えていきます。ETFを Creation するケースと、からっぽにしてETFを破るケースのどちらが多いかというと、前者の方が多いと思うよ。そうしないと、純資産は増えていかないからね。

ETF は消費目線では簡単だけど、裏では凄く色々と動いてるもの

何が言いたいかというと、ETFって簡単だよね? SPY買っておけば、指数と同じ効果が出せるワケでしょう。ETFというのはすっごい優れもの商品なんだよね。しかも、運用会社があくせく働くんじゃなくて、外部の人間・ヘッジファンドとかがやってます。つまり、「コストの外部化」が出来てる。だから、ETFというものは凄く安い値段で運営ができるんです。メンテナンスコストが低いんです。

しかし、個人投資家・機関投資家の立場からすれば非常に便利・優れもの・簡単なものですが、裏では水面下でごちゃごちゃした作業がドンドンと起きてるワケでしょう。だから、SPYだけで13兆円。これによって、引き起こされる個別株の取引も、もの凄く増えたということです。

先週の下げキッカケはアップルの利益警告

先週の下げのキッカケになったのは、APPLの利益警告だと僕は思うのね。APPLは、S&P500の中で1番大きい時価総額の銘柄です。だから、APPLがツンっと落ちると、指数が下がるよね。ETFが下がる。ビックリして投資家はETFを売る。ETFが落ちるなら、現物も売る。そういうスパイラルが起こって、マーケットが1方向にぐーっと来たんじゃないかというセオリー(推論)があるんだよね。

1987年のブラックマンデーと今回の相違点・類似点とは

そんな議論をみんなが喧々諤々してるのを見て、僕が思うのは「そういうことって昔にもあったよねー」ってことです。具体的には1987年のブラックマンデー。あの時はヒッドイ相場だったんだけどね(笑)1日で株価指数が-23%も下がったんだよ(笑)今は1週間で-10%とかだから、あの時のほうが遥かに怖かったのね。

ポートフォリオ・インシュアランス

当時はポートフォリオ・インシュアランスという手法が使われてて、主に年金とかやってる機関投資家が現物のバスケットを沢山持ってて。相場が下がってきたら、先物売っておけば良いんじゃないの?自動的に先物売るプログラム組んでたら良いんじゃないの?というものでした。問題だったのは、機関投資家の皆が、ストップロスみたいなものを組んでたんですね。

ブラックマンデーで起きていたこと

何がおこったかというと、1987年のブラックマンデーでは、皆が同じ水準でストップロスを入れてたんです。よくあるよね?ストップロス狩り(笑)ストップロスの水準を超えたら怒涛のように売りがきて、先物が落ちたから、現物も落ちていく。そういう1方向で崩れていったんです。

相違点と類似点

今回との大きな違いは、ストップロスみたいな水準は無かった点です。言葉を変えると、大きなお金が動いてるメカニズム≒ディレクショナルという方向性によって、予めインプットされた(プログラムされた)措置は無かったんですよ。ただし、自然と価格が乖離したらアービトラージがかかるという仕組みです。それで、指数を構成する銘柄のアップルショックで皆が釣られていったという説明になると思います。

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以上です。