【広瀬隆雄氏】2021/5/11 テクノロジー株急落とプライバシー保護規制の関係について
“じっちゃま”こと、広瀬隆雄氏によるYoutubeライブ議事メモ
2021年5月11日 テクノロジー株急落とプライバシー保護規制の関係について
目次
はじめに
最近、テクノロジー株が下がっている3つの理由
テクノロジー株が今急落してて、それに関する話がしたいと思いました。
インフレ懸念材料が出ている為
まず第1の理由は、インフレ懸念だと思います。
週末にテキサスから東海岸(ニューヨークとか)の石油関連製品を輸送するパイプラインが、ハッカーにハッキングされて現在止まってます。これは一時的なもので、ごく短期で解決する問題だと思います。
しかし、これからアメリカはサマードライビングシーズンになるタイミングで、大動脈であるパイプラインが数日間でも止まり、ガソリン価格が高騰するんじゃないかとの懸念が出ています。ちなみに、全米平均ガソリン価格は、$2.97 くらいですけども、今日とか明日のタイミングで $3.00 まで値上がりするんじゃないかと言われています。
それに釣られて、10年債利回り(今、1.60 をちょっと超えてるあたり)が、今後上昇するんじゃないかと言われています。長期金利が上昇したら、株式のバリュエーション、とりわけ高いバリュエーションをつけてるネット株にとってネガティブである。このような考えから、ネット株・テクノロジー株が売られているのだと思います。
前年同期比の比較が困難である為
2つ目に、新型コロナワクチンの接種が進んでいます。去年の今頃は外出禁止令が出てて家でゴロゴロしてたと思います。経済が再開して皆が外に出て行くと、業績の前年比較が困難になる。ピークデジタルというものですよね。業績的にもアゲインストの風が吹くんじゃないかと言われています。
ネット広告の在り方が大きく変化しようとしている為
3番目の理由。これが今日、主に説明したいことです。
Web Cookie と呼ぶものが廃止というか自然消滅というか、オワコンになるんじゃないかという運びです。その絡みでネット広告の在り方が、今大きく変わろうとしている。それに纏わるぼんやりとした不安が、FBとか、GOOGLとか、昨日決算発表したTTDと言った銘柄が売られている理由だと思います。
旧来の技術 “Cookie” とは何か
みんな、Cookie って何か知ってます?知らない人の為に簡単に説明しておきます。
皆さんのパソコン上に残るWebを閲覧した際の足あとですね。皆さんが閲覧した小さなデータファイルのことをCookie と呼びます。
- 参考リンク:HTTP Cookie (Wikipedia)
課金サイトとかで、アクセス許可の簡素化をしたり、Amazon なんかでショッピングカートありますよね。ショッピングカート情報の維持に使われてるのがCookie です。Webが出てきて、かれこれ20年くらい使われてる古い技術ですが、出てきた時は便利だねって、ネガティブな意見はあまり無かったものです。しかし、最近になって、Cookieが個人情報が駄々漏れになってる原因になっているんじゃないか、ユーザに断らずに情報を集めて、皆に配るというのは良くないんじゃないかと言われています。
欧州委員会が GDPR(プライバシー保護規制) という新しい基準を発表しましたが、Cookie が問題視されて、なるべく使わないように行こうじゃないかという業界の機運になってます。
Cookie に変わる新しい技術
トレードデスク社が推進する “UID” と呼ぶ技術
たとえば、TTDは、UID (Unified Identity) という新しいオープンソースのプロジェクトをやってます。
UIDは、暗号化された個人のIDを指します。ユーザが新しくWebサイトに訪問したら、「UIDにオプトインしますか?」とWebサイトが聞いてきます。そして、「オプトインします、Yes」ってクリックしたら、メールが飛ぶですね。そのメールを開けて「Yes」をクリックすると、そのサイト内でIDのトラッキングが始めます。このIDは乱数で暗号化されてて個人情報は分かりません。また、転用されても僕本人だとは分からない。暗号通貨と一緒ですよね。UIDも暗号化されることで保護されます。
このUIDに業界全体が移行していこうじゃないかという機運になっており、もっと言うと、「盛り上がらなければいけない、盛り上がって欲しい」というものです。
なぜ、Cookie ではダメで、UIDなら良いかというと、UIDの場合、利用規約が明記されてます。UIDやりますか?って必ず聞かれて、クリックしないといけない。「オプトイン=つまり自主的に加入」というステップです。欧州委員会のGDPRとか、CCPAとか、あるいはAppleの新しい個人情報保護基準などに、UIDは全てに合致します。
Cookie 亡き後、より一層インターネットが使いやすくプライバシー保護をするためにUIDというものが始められてます。でも、UIDは端緒についた後で、市民権は得てないというか、知らない人が多いですよね。
DEP と呼ぶ2重付加の保護サービス
このUIDに加えて、2重保護のため、DEP(Double Encryption for Publishers)というもので付加的サービスを重ねることができます。つまり、パブリッシャー(配信者≒Webサイトの運営者)向けに、暗号化保護を加えるというものです。パブリッシャーが、2次利用ユーザの指定ができる仕組みが「DEP」というものです。
UIDとDEPの2重レイヤーで、インターネットのプライバシー問題を根本から解決してやろうという試みです。これらはオープン・スタンダードで、特定企業がやってるものではなくて、業界ぐるみの努力だと思います。
まだ次世代のスタンダードはハッキリしていない
これ以外にも、Google は「プライバシー・サンドボックス」という名前だったかのツールを持ってます。あれはGoogle だけがやってるソリューションなので、プライバシー問題の解決策を1企業に依存して本当に良いのかしらという不安はあります。次世代のスタンダードが、サンドボックスになるのかUIDになるのかまだ判然としない、どうなるか分からないという状況です。
株価市場への影響
株価との話としてみれば、今までデジタル広告業界が慣れ親しんできたCookie がオワコンになろうとしている。すると、新しいスタンダードが出つつあるけども、どのくらい消費者に受入れられるか、どれくらい効き目があるのかは分からない。
すると、過渡期・移行期に広告の有効性、つまり「消費者が見たい広告が表示できるか」というものがあります。消費者が見たくもない広告が出るようだと無視されるので、クリック率が下がります。
すると広告を出稿するリターンが無くなります。全体として広告のROIがストーンと落ちると、みんな広告ださなくなるし、ネットショッピングが不活発になり、デジタル・コマース全体が落ち込むんじゃないかと漠然とした不安があります。これで昨日、FB、GOOGLとかRVLV、TTDとかの銘柄が下がった理由なんじゃないかと僕は思います。
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工事中
以上です。