【広瀬隆雄氏】2021/8/29 ジャクソンホール・シンポジウムの結果
“じっちゃま”こと、広瀬隆雄氏によるYoutubeライブ議事メモ
2021年8月29日 ジャクソンホール・シンポジウムの結果
目次
はじめに
パウエル議長のスピーチのポイント24選
先週の金曜日(8/27)に開催されたジャクソンホール・シンポジウムの結果について、しゃべりたいと思います。パウエル議長のスピーチの原稿があります。スピーチを全部読んでみました。24箇所のポイントについて挙げてみます
・原稿 – Monetary Policy in the Time of COVID – Fed
・アジェンダ – Jackson Hole Economic Policy Symposium – Kansascityfed.org
- 米国経済は力強く、しかし、凸凹な回復の途上にある。
- 普通、景気回復局面で個人所得の減少は見られなかった。
- 逆に個人所得は上昇した
- 突然のモノへの需要集中が、品薄やボトルネックの原因になった
- 耐久財インフレは、そのようなシフトが原因である。
- 今回の不況では、最初の2ヶ月で、あっという間に3000万人の雇用が失われた
- しかし、その後の回復は急速で、コロナ前より600万人低い水準まで現在回復してきた
- 黒人・ヒスパニックなど社会的弱者が受けた打撃は大きい
- レストラン・航空会社・歯科医などが大きな打撃を受けた反面、耐久消費財はブームとなっている
- 過去12ヶ月の個人消費支出インフレは4.2%であり、ターゲットの2%を上回っている。
- 中身を見ると、ごく一部の品目にインフレが集中している
- 値上がりが激しかった中古車価格は、既に下落に転じている。
- 過去25年間で見ると、耐久財インフレは、サービスインフレよりもずっと低い状態が続いていた
- だから今後、耐久財インフレは一巡するだろう
- 賃金の上昇は、生活水準の向上に欠かせない
- しかし、生産性の向上が無い状態で賃金上昇すると、賃金価格スパイラルを引き起こす。だから良くない。
- 今の時点では、そのような悪性スパイラルが起きる兆しは見られていない
- 長期期待インフレ率は低い位置に固定されている
- 連邦準備委員会は、目先の物価に振り回されることなく、慌てて政策を変更すべきではない
- インフレに関しては、かなりの更なる進歩が達成”できた”
★ここが大事。過去形。インフレはゴールを達成したということ - 雇用の達成は、明らかな進捗が見られている。
★現在進行形であり、終わりかかっている - 年内にテーパーを開始するのが適切である
★言い切っている。もう1度読み上げる。 - テーパー開始時期と毎月のテーパー額は、その後の利上げタイミングとは無縁だと思ってほしい
★非常に重要なので、もう1度読み上げる。 - 利上げに関しては、これまでと違う、より厳しい合格基準を満たさければ開始しない
講演の解説
すこし解説を加えます。
メインシナリオは、11月FOMCでテーパ開始と予想
たぶん、11月のFOMCくらいからテーパリングを開始すると思います。このスピーチを読んだ限りだとね。今年のFOMCは9月、11月、12月と3回あります。なぜ、11月に決め打ちするかというと、アメリカの中央銀行には不文律の掟というものがあります。破られることもありますが、普通、12月の年末直前には引き締めはしない掟があり、ジェントルマンです。
中央銀行ではないけども、レイオフする際も一緒で、12月に首切りするような経営者は下の下の経営者だと見られます。そんな経営者は投資家からの評価が低いです。今ずーっと説明してきたパウエル議長の言葉尻・ニュアンスを咀嚼すると、だいたい外堀は埋まったと彼は言ってます。年内にテーパーを始めるよっとコミュニケートしている訳だから、ギリギリまで引っ張る必要がありません。
だから、メインのシナリオは11月と考えて良いと思います。
9月雇用統計がとても重要
これはスピーチから読み解けなかったことなんだけども、今週かな。9月第1週に雇用統計の発表があります。もし、雇用統計の数字が強ければ、11月よりも前倒しでテーパーが開始される可能性はあると思ってます。インフレに関しては達成できたと名言している。後は雇用だけ、もうちょっと粘りたいと言っている。
ということで、今度発表される雇用が物凄く強ければね。雇用もそろそろOKでないのという話になります。そうであれば、もう待ってる必要ないよねという話になるので、今回の雇用統計はとても重要だと思います。
数字が強ければ、マーケット荒れるよ。だから、次の雇用統計は、覚悟して望んでください。
「利上げタイミングと無縁」は、オプショナリティ
スピーチの中で、「テーパー開始時期・毎月のテーパー額と、利上げタイミングは無縁です」というふうに、パウエル議長がコメントしている箇所があり分かりづらかったと思うのね。解説すると、これは「オプショナリティ」という概念なんですよ。
オプショナリティとは、右にも左にもどちらにもいける、退路を作っておくことです。選択肢を持つことは、中央銀行家にとって、非常に重要なことなんです。例えば、ボクシングでコーナーに追い詰められたらスルッと抜けて、なるべくリングの真ん中に自分のポジションをどちらにも動けるように、狭い場所に追い詰められることを回避する目的で、この文言を記載しています。
彼が言ったことは「テーパー開始時期・毎月のテーパ額は、利上げタイミングとは無縁」というものです。
投資家は、これまで毎月800億ドル買ってるもの700億ドルに減額、住宅抵当証券を400億ドルを350億ドルに減額したとする。ちょっと待てよ。。これは1/8のペースだよね。すると、8ヶ月経過したらテーパー終了だ。利上げのタイミングだわ。って、投資家は先回りして、将来への見通しというものだよね。ピラミッドを降りていくように、それが階段上で減額ペースがわかって、0になるタイミングが自ずとわかって、自動的に投資家は考えちゃうんです。
だから、パウエルはそれをしないでくださいって今回のスピーチで言ってます。で、何が起こるかというと、それが起こるんですよ(笑)
テーパリング開始が近い
パウエルが釘を指したから、0になっても利上げしないということが、起きるわけじゃないんです。要するに、Keep guessing。投資家にFRBの手の内を読まれ過ぎないことが非常に重要なんです。中央銀行家にとってね。
例えば、女の子みたいなもんなんだよ。あまりにも彼女の次の行動、手の内が読みやすいと、男から舐められる訳でしょう。だから、女心は秋の空でしょう。そういうことが男を夢中にさせる訳でしょう。Heart to getって言うのかな。すっと逃げられちゃう。このような状況をワザと演出するのは、我々の日常でも、男女間でもあるよね。それと同じことを、パウエル議長は投資家にやってます。
そこら辺からスピーチを読んで僕が感じたことは、すごく丁寧に先々の事まで考えて、予防線を張っているなと。「だからもう、テーパー開始、寸前だな」っと、この一文を読んで感じました。
QAコーナー
工事中
以上です。