【広瀬隆雄氏】2021/10/16 液化天然ガスタンカー、石油精製品タンカー市場について

“じっちゃま”こと、広瀬隆雄氏によるYoutubeライブ議事メモ
2021年10月16日 液化天然ガスタンカー、石油精製品タンカー市場について

目次

  • はじめに
    • マーケットの考え方を強気に転換します
      • なぜ、強気転換か:10/15(金) S&P500 がフォロースルーした
      • VTIで良いが、NASDAQは弱含みなので、投資戦略を広く見る
      • アメリカは消費が強く、インフレ中心に物事を考えてる
      • プライシングパワーが無い例は「日本」
      • エネルギー関連をオーバーウェイトしていく
    • 具体的な注目銘柄の紹介
      • 天然ガスの銘柄①:ダイアモンドバック・エナジー(FANG)
      • 天然ガスの銘柄②:パイオニア・ナチュラルリソーシーズ(PXD)
      • 天然ガスの銘柄③:アンテロ・リソーシーズ(AR)
      • 石油の銘柄:BP
      • 船関係:フレックスLNG(FLNG)
      • 石油精製品タンカー:トーン(TRNB)
    • 天然ガス・LNGタンカー市場の話
      • 天然ガスは2030年に+50%増を見込まれている
      • 天然ガスの成長見通し
      • ヨーロッパでは大きなアービトラージ需要が生じている
      • 今年の冬の天然ガス・LNGの在庫が枯渇する
      • 来年の2月までは天然ガスで遊べる
    • 石油精製品タンカー市場の話
      • NIMBY:Not In My Back Yard(我が家の裏には御免)
      • 石油精製品タンカー不足による高騰する可能性
  • QAコーナー
    • 工事中

はじめに

マーケットの考え方を強気に転換します

今日は、LNGタンカーと石油精製品タンカーの話をしてみたいなと思います。その前にマーケット全体に対する考え方なんですけども、ちょっと考え方を変えようと思います。

強気に転換します。

なぜ、強気転換か:10/15(金) S&P500 がフォロースルーした

理由なんですけども、S&P500指数にて、金曜日の立ち会いで、明らかなフォロー・スルー・デー(follow through day)が出ていました。もっと言うと、50日移動平均線の上に指数が出来高を伴って抜けてきた。なので、明らかな強気転換します。上昇波動入りということです。

今、皆さんにご覧頂いてるのがS&P500のチャートです。50日移動平均線が赤の線(4435)にあります。金曜日の引け値(4471)ですので、明らかに上に抜けたということです。そして、ボリュームを見ると前日と比べて明らかに増えており、教科書的なフォロー・スルー・デー のプライスアクションだったと思います。

VTIで良いが、NASDAQは弱含みなので、投資戦略を広く見る

NASDAQ総合指数を見ておきたいんですけども、NASDAQの方は今ひとつ煮えきらないというか、チャートの強さでいうとちょっと弱い感じです。赤の線が50日移動平均線ですが、ほんの少し上回った程度。だから、S&P500 と比べると「どうかなぁ」と感じさせるチャートです。

投資戦略としてはフルインベスティメントに持っていきたい訳なんですが、当然VTIが良いと思うんですね。ただ、NASDAQが弱い点も踏まて少し変えていく必要があるんじゃないかなと考えています。

アメリカは消費が強く、インフレ中心に物事を考えてる

具体的に僕が今考えていることを言うと、「なるほど、消費は強い。米国GDPの国内消費は70%以上を占めている為、消費が強いということは、経済はOKや」ということですよね。実際に金曜発表の9月小売売上高は予想 +0.5% に対して結果 +0.8%。強い数字でした。消費者物価指数もこのところ非常に強いです。5.4%で推移してます。高止まりしているということです。地銀インフレがあるとしばしば言われています。FRBは地銀インフレを一番嫌うので、たぶん次のFOMCが11月の頭にありますが、テーパーの開始を宣言すると思います。

経済は微熱っぽくね。オーバーヒート気味に推移しているということです。そして、投資家の関心事は物価、つまりインフレを中心に物事を考えている。その環境下において、プライシングパワーのある企業・株を買うべきだと考えます。つまり値上げ出来る商売・ビジネスを買っていくということです。

プライシングパワーが無い例は「日本」

たとえば日本を翻って見た場合、なかなか皆の給料は上がっていないし、お昼いってもレストランの定食の値段とか上がっていないですよね。日本社会は、まだ値上げが簡単に受け入れられる環境に無いと思うんですよね。日本に住んでないから認識が合ってないかもしれないけど。でも、日本はプライシングパワーが無い典型的な例です。そういう国、そういう企業はインフレの環境下においてアンダーパフォームすると僕は考えています。

エネルギー関連をオーバーウェイトしていく

そうではなくて、率先してどんどん値上げが出来る企業が、今は新値を更新しているんじゃないかなと考えています。その具体的な1つの例がエネルギー関連です。今新値に挑戦している銘柄が多いんだけども、今後はそのような株をオーバーウェイトする必要があるんじゃないかと考えています。

もっと踏み込んで言えば、2020年2〜3月に新型コロナが流行して在宅勤務を強いられる状況になり、ネットでしか物事ができなかったので、ハイテク・ハイパーグロース株、あるいはワクチンやバイオの話ね。そういうのが物色の中心でした。

具体的な注目銘柄の紹介

今はガラッと様変わりして、物色の矛先はプライシングパワーがある企業、もっと言えばエネルギー企業。そのような企業にフォーカスを移していく必要があると思います。

具体的にどんな銘柄があるかを挙げていきます。

天然ガスの銘柄①:ダイアモンドバック・エナジー(FANG)

まず、ダイアモンドバッグ・エナジー(FANG)これは、テキサス州の西の方にパーミアンという地層があり、シェールオイルやシェールガスを生産している会社です。チャートは綺麗に緑色のカップが出て、今は柄の部分・ピボットと書いてあります。上値抵抗線が上値支持線に変わる。その点をピボットと言います。この水色のシェードがかかっている線が買いゾーン。つまり、買いシグナルが出たばかりです。

天然ガスの銘柄②:パイオニア・ナチュラルリソーシーズ(PXD)

これも西テキサスのパーミアンという地層でシェールガス、シェールオイルを生産している会社です。これもピボット・買いシグナルが出たばかりでちょろちょろして新値追いの展開になっています。

天然ガスの銘柄③:アンテロ・リソーシーズ(AR)

同じくシェール関連なんですけども、マーセラスという地層で主に天然ガスを生産しています。マーセラスとはアメリカ東部にあるバージニア州とペンシルバニア州に跨る地層です。これなんかも非常に良いんじゃないかなと思います。

シェールで天然ガスを生産している会社はいくつかあるんですが、まず最王手がEQT、2番手がXOM、3番目がSWN、4番目がAR。なので、会社の規模としてはARはあまり大きくない。なぜ、このチャートが一番良い形をしているかというと、ヘッジです。将来の生産分を先物でどうヘッジしてるのかが違い、ヘッジストラクチャは、ARが一番ヘッジが少なくて、目先のアップサイドを最も享受しやすいという銘柄です。

石油の銘柄:BP

ちょうど、ハンドル作った後でブレイクアウトしようとしている。

船関係:フレックスLNG(FLNG)

船関係でいうとLNGタンカーで、フレックスLNG(FLNG)。これなんかが良いんじゃないかな

石油精製品タンカー:トーン(TRNB)

まだチャートはあんま良くないけどね。まだ相場は非常に若いと思います。

天然ガス・LNGタンカー市場の話

まず、世界のエネルギー消費を見てみた場合、1日あたり2.6億バレルくらいのエネルギーが今消費されています。これはBTスタティスカル・レビューという資料集によると、年率7〜8%くらいで中長期成長していくだろうと書かれています。これは楽観的な数字かなって僕は思うんだけどね。世界全体で消費されてるエネルギーの内、原油と石炭が占める割合は大体6割です。

天然ガスは2030年に+50%増を見込まれている

しかし、将来は地球温暖化などのテーマがあるため、リニューアブルに変えていかないといけない。例えばソーラーパネルとかね。長期的には50%以下に持っていくべきだとBTなんかは調査報告書で書いてます。将来はグリーンエナジーにいくことが間違いないんだけども、当分の間の繋ぎで向こう10年〜20年くらいは、天然ガスに依存する部分が大きくなるんじゃないかと言われています。理由は次のとおりです。

  • 天然ガスはふんだんに多く存在する
  • 天然ガスは圧倒的にクリーンである
  • 天然ガスはスイッチオン・スイッチオフがしやすい。
    • 原油→天然ガス、天然ガス→原油が出来る発電所が多い

そういった理由から天然ガスが注目されています。天然ガスはガスパイプラインで消費地まで送られます。しかし、パイプラインはフレキシブルではありません。つまり生産者から特定の需要家にしか送り出すことしかできない。

例えば「オクラホマから天然ガスを突っ込んだら、ニューヨークのブルックリンで出す」というように行き先が固定されるものです。非常に柔軟性が無いため、近年では液化天然ガス。つまり天然ガスを冷却液化してタンカーに載せて世界のどこへでも送れる。そして輸送して、消費地に着いた時に温めて再度ガスに変えて消費するものがLNGというものです。これ大掛かりな装置が必要になります。冷蔵庫みたいにね。装置の値段が高いのでこれまで普及していなかったんだけども、今は普及し始めている。LNGが投資家のフォーカスになっています。

天然ガスの成長見通し

世界全体では3.6億トンくらい消費されています。これが2030年までに5.5億トンくらいまでに需要が増えると言われています。つまり +50%増。今は100万トンLNGの需要が増えると、LNGタンカーは1.7隻必要になります。1.9億トン需要が増えると見込まれてる訳だから、323隻の新しいLNGタンカーが必要です。現在、世界では毎年35隻のLNGタンカーが建造されています。だから、向こう9年で315隻ほど。大体需要と供給のバランスが取れて、そろばん的に合うものです。

LNGタンカーが不足する可能性

しかし、足元のLNG船の建造が物凄く遅れると思います。0 に近いと思う。理由は、今、コンテナ船の市況が高騰していて、韓国の造船上ではコンテナ船ばかり一生懸命に作ってます。付加価値の高い大きな船は世界の造船キャパシティで1年間で60隻くらいは作れると思いますが、ほとんどがコンテナ船です。向こう3〜5年くらいの展望だとLNG船が凄く不足するということはほぼ間違いないということです。

さっきLNGは先行投資・設備投資が凄くかかるという話をしました。生産者と需要家が条件を固定して安定的・長期契約で玉を提供するのが一般化されています。典型的な例がカタールです。日本はカタールから長期契約で天然ガスを購入してます。20年契約とかで凄く長い契約です。

ヨーロッパでは大きなアービトラージ需要が生じている

それ以外のマーケットをスポット市場と言うんですけども、長期契約と比べてスポット市場は小さい為、価格変動は凄く極端なことになります。アメリカでは6ドル以下の水準ですが、その天然ガスをヨーロッパに持っていくと30ドルなんです。アジアに持っていくと35ドルなんです。物凄いアービトラージ(差益)が得られます。アービトラージ需要が大きい。

今年の冬の天然ガス・LNGの在庫が枯渇する

LNG船が港に着いた時に船主がちょっと待てと。同じヨーロッパ内の向こうの港に付けろ!っと、ヨーロッパ内でもアービトラージが発生している。だから、LNG船が不足していて奪い合いが生じている。最も高い値段で売れる場所に動かしてる。ヨーロッパ全体として、今はLNGの在庫が少ないです。だから、今年の冬を過ぎたらLNGの在庫は空っぽになると思う。冬はまだまだ天然ガス価格は強含むと僕は考えてます。

来年の2月までは天然ガスで遊べる

しかし、来年2月になるとロシアからヨーロッパにかけてパイプラインが通ってて、それの追加工事「ノルドストリーム2」が開通します。それによってロシアがヨーロッパに提供できる天然ガスのキャパシティが10%くらい増えると思います。それが開通したら需給関係が崩れると考えてます。もっと言うと、今から来年の2月くらいまでは遊べるということです。でも、長期でみると今30ドルくらいの価格が10ドルくらいまで下がるシナリオもあるんじゃないかなって考えています。

石油精製品タンカー市場の話

いわゆる「プロダクトタンカー」と英語では言われます。これまでの石油のビジネスというものは、例えばサウジアラビアとかアフリカとかで掘って原油が出てくるんですけども、原油のことを「クルード」と呼びます。クルードタンカーに原油積んで、消費地(アメリカとかヨーロッパや日本など)に持っていき、消費地で原油の精製所(リファイナリ)して、ガソリンにしたり原油にしたりってしていたんですね。

NIMBY:Not In My Back Yard(我が家の裏には御免)

しかし、Not In My Back Yard。うちの近くで精製したくないという先進国の人のわがままというか美意識というか、環境に良くない精油所はうちの街に来てほしくないという考え方がある。例えば、カリフォルニアなんか慢性的に石油精製キャパシティが不足しているんですけども、新規で精製所が建てられません。なので、他の州から輸入しています。同様に日本でもヨーロッパでも、老朽化した石油精製所は取り壊して、新規の精油所は立たない。完成品を輸入するのが主流になってます。

世界の石油の動きの内、精製品比率は35%くらいまで上がってきている。昔は10%でした。つまり、製油所はクウェートとかサウジアラビア、ナイジェリアとか原油が取れる国で大きな精製工場を立てて完成品まで持っていって、蒸留したものをタンカーで消費地まで運びましょうと。しかし、精製タンカーの数が不足しています。

石油精製品タンカー不足による高騰する可能性

銘柄ではトーン(TRNB)あとは、アーブモア・シッピング(ASC)。これなんかも製油に関わる銘柄です。たぶん、一番良い銘柄はTRMBだと思うけど。今は一生懸命にコンテナ船を作っているので、LNGタンカーも作れないし、石油精製タンカーも作れない。タンカーの新造船は、グローバルのキャパシティの6%くらいしかない。その一方で排ガス規制とかに適合しないタンカーが1年間で30隻くらいスクラップされているので、差し引きで2%くらいしか増えていない。これに対して需要のほうが遥かに遥かにドラマチックに変わっています。近く石油精製品タンカーが物凄く不足する時期がくるんじゃないかなっと思います。

QAコーナー

工事中

以上です。