【企業調査】Zoom – 落ち込んでる今だからこそ学ぶ、その魅力
Zoom Video Communications, Inc (ティッカー:ZM、以下 Zoom)は、新型コロナウィルスの感染流行に伴い、リモート在宅銘柄の筆頭とも言われ、2020年はこれまで以上の急成長を果たしました。IPO後の決算はオールクリア継続中。
しかし、10月中旬以降からダウントレンドが続いている状況です。本銘柄を再評価している人も多いと思うため、改めてその魅力を掘り下げてみます。
公式ホームページ : Zoom Video Communications, Inc
目次
はじめに
Zoomの株価は、2020/10/19終値をピークに、40%下落した
本記事の動機となる現象です。
Zoom の株価は、6ヶ月日足チャートで見ると下落トレンドの中で2021年をスタートする状況にあります。
約2ヶ月前の568.32$ をピークに、337.32$ まで約40%下落しました。
このまま焼かれ続けるか、それとも復活するのか
この1ヶ月半、私を含めて多くのZoomホルダーは焼かれました。
振り返ると「新型コロナワクチン承認」と「大統領選挙で共和党勝利」という2つのイベントが、この1ヶ月半の米国株式市場では踊りました。これに反応したのがバリュー株・景気敏感株・新興国銘柄です。
一方で、恩恵を受けていたハイパーグロース株は成長が軟調。特にZoom は大きな落ち込みが今も続いています。
結論
短期は近づかず
現時点で、Zoom の短期トレードは非常に難しいと結論しています。ショートで入っても良さそうなトレンドに見えますが、ちょっとしたことで ↑ に反応する材料はとても多いと見ています。
9ヶ月後の決算が勝負の時
Zoomは、2020年9月決算(FY2021-2Q)で、とてつもない結果を発表しました。
- EPS : 実績 0.92$ (予想 0.45$ 、前年同期比 1,150% 成長)
- 売上高 : 実績 6.6億$ (予想 5億$、前年同期比 450% 成長)
センセーショナルな決算は、1年後のハードル。これを乗り越えられるかが勝負です。
見方を変えると、3月の4Q、6月の1Q決算は、問題ない見通しとも言えます。まだ在宅特需前が起きる前の堅調な業績成長時点が比較対象だからです。
ピックアップ分析
いくつかの材料を拾い上げて考察する、「ピックアップ分析」をしてみます。
「リスク」「財務」「事業」について見ていきます。
リスク
Zoom はIPOから1年ほどのグロース銘柄であり、新型コロナ禍で在宅勤務へのビジネススタイル変化によって恩恵を受けています。この結果、元々高かったPERが更に高まったバリュエーションは、リスキーな点の1つ。高PERな銘柄は、長期金利の動向に敏感に反応します。
金利上昇に敏感に反応する
先ほどのZoomの6ヶ月日足チャートに、米国10年債の金利チャートをオーバーライトしました。
金利の急上昇に合わせて、Zoomの株価は下げが顕著です。
「株式と債権市場はシーソーの関係」とも言わますが、Zoomのような高PER企業は特に反応しやすい傾向になります。
少なくとも、FRBは2023年まで長期金利の利上げはしないと宣言しています。2021年で大きな上昇は無さそうですが、ワクチンニュースなどで急速に反応を示していました。現在も新型コロナウィルスの猛威は続いています。したがって、Zoomは、株価だけではなく、金利動向とセットで判断しておきたいです。
急成長で前年同期比のハードルが上がっている
先ほども示した通り、2020年9月の決算結果が凄くセンセーショナルな成長性でした。この成長性が1年後にはハードルになります。
これはまだ、「見通し」であるという点に注意しておきたいです。コンセンサスは会社からのガイダンスや社会動向によって変動していきます。決算直前に修正が入ることもザラです。
したがって、「見通しのまま」、「上方修正」、「下方修正」のいずれかの可能性を日々チェックしながら、投資判断をつけていくことが今後重要となっていきます。
財務
直近の決算をおさらい
直近の2020年12月決算結果をおさらいします。簡潔に述べると「いつも通りの完璧な決算」というものでした。連続してコンセンサス予想を上回っており、問題の無い状況を継続しています。
・EPS 実績 $0.99 (予想 $0.76, 前年同期比 +1,000%成長)
・売上高 実績 $777.2 M (予想 693.95 M, 前年同期比 365.4% 成長)
営業キャッシュ・フロー・マージンが素晴らしい
テクノロジー・SaaS関連の他社決算と比較すると、Zoomの営業キャッシュ・フロー・マージン(※)が特筆して高いです。一般的には 10〜15%以上が優良とされている中で、直近決算でも50%以上を持っている点は、投資判断に安心感を与えてくれます。
(※) 営業キャッシュ・フロー・マージン・・・売上高に対する営業キャッシュフロー比率。本業で毎月収益を取れているかが分かる評価指標の1つ。
事業
ロイヤルカスタマー数が伸び続けている
決算の中では、ビジネス指標 (Key Business Metrics) が記されており、Zoom の場合、「従業員10名以上の顧客数」と「年間10万$以上の顧客数」の2つを発表しています。
共に堅調な推移を示していますが、特に後者の指標に注目したいと考えます。
Zoom にとって、まさに ロイヤルカスタマー とも呼ぶべき指標であり、売上の約20%を占めている指標です。この顧客を増やしていくことをZoomは重視しており、直近の2020年12月決算でも成長率に陰りが見えない点は、好材料です。引き続き注目しておきましょう。
様々な新機能・新ソリューションを発表
昨年秋のユーザカンファレンス (Zoomtopia) では、様々な新機能を発表しました。
個人的には Zoom Apps・Alexa との連携 に注目しています。 Zoom が人々の生活への浸透度が加速する可能性があるためです。
- Zoom Meeting (ミーティングソリューション) →共有レイアウト、リアクションアニメ、トランスクリプトハイライトなど
- Zoom Rooms (クラウド会議室ソリューション) →ダッシュボード強化、Alexa for Business との統合など
- Zoom Phone (電話・クラウドPBXソリューション) → 日本展開を本格化
- On Zoom (新ソリューション) → 有料タイプのウェビナー。1000人規模にも対応。アメリカにてベータ版公開
- Zoom Apps – Zapps (ソフトウェア開発) → SDKの提供。Slack や Tolelo などにZoom機能が搭載できる
出典元
・2020/12/22 Zoom日本法人代表 佐賀文宣が振り返る2020年と、2021年の展望は?
・2020/10/15 Zoom、10月14日発表の新機能まとめ – イベント向けに 最大1000人に対応も (マイナビニュース)
・2020/10/14 UCaaSプラットフォーム:Meetings、Phone、Webinarの新機能 (Zoom Blog)
・2020/10/9 Zoomtopia 2020:壮大なバーチャルイベントの開催 (Zoom Blog)
おわりに
攻めてる企業は面白い
調べてみると、改めてZoom は「攻めている」と実感しました。
ビジネスの潮流として、常に「守り」と「攻め」の両立は議論を要しますが、強く攻めてる企業から新しい世界が生み出されていき、ワクワクさせてくれて、何よりも投資冥利に尽きます。
もちろん、様々なリスクも眠っているため、リスクテイクしていくことは忘れずに。
株価は下がってる最中となりますが、すこしでもホルダーの勇気になればと思い寄稿しました。
今後の参考となれば幸いです。
主な参考記事
- 2020/12/31 Twitter – $ZMは-40%落ち込んだが、2021年はサプライズもありうる
- 2020/12/9 CFO of the Year: Kelly Steckelberg, Zoom
- 2020/10/15 【Zoomtopia 2020速報】イベントプラットフォームOnZoomとアプリ連携機能Zappsが発表
- 2020/7/6 Web会議システム、せっかくならケチらずに有料版を使うべき理由
- 2020/6/17 「Zoom」対抗馬が続々、ビデオ会議大競争の行方
- 2020/5/22 MM総研 – Web会議システムの利用シェアはトップの「Zoom」が35%
- 2020/4/27 J.D.パワー – テレワーク下におけるWEB会議利用に関する日米調査
- 2020/4/10 The 3 Secrets Behind Zoom’s Triple-Digit Growth
- 2019/12/2 今シリコンバレーのSaaS企業で最も効率的に、そして急成長しているビデオ会議サービス、Zoom
- 2018/12/14 Web会議SaaS「Zoom」のマーケティング分析
- ZoomとSkypeの違い