【広瀬隆雄氏】2020/1/21 新型コロナウイルスが株式市場に与える影響

2021年5月8日

“じっちゃま”こと、広瀬隆雄氏によるYoutubeライブメモ
2020年1月21日 新型コロナウイルスが株式市場に与える影響

目次

はじめに

アジアのマーケットが下げた

緊急ライブやります。今日、アジアのマーケットが下げました。

香港 -2.8%、上海 -1.4%、日経平均 -0.9%くらいだった。下げた理由は、「新型コロナウィルスが広がっている」ということだった

中国武漢から発生した様子だが、中国だけではなく、韓国や日本でも症例が発見された。それにタイ。このような形で広がる様相を見せている。2003年のSars の時もアジアの株式市場が大きく下がった。とりわけ香港が大きく下げたと記憶している。

このニュースに加えて、もう1つ悪い材料が香港市場にはあった。それはムーディーズという格付け機関が、香港のソブリン格付けをAA2→AA3 にダウングレードした。

簡単に説明する。大きくは3つの格付け機関が存在する。

  1. ムーディーズ
  2. スタンダード・プアーズ
  3. フィッチ

2番、3番は、同じようなレーティングシステムを使っているが、1番だけは使い方が違うタイプ。いづれにしても香港は格付けが高かった。1番のムーディーズが香港に対して評価が辛いのだが、更にダウングレードしたというもの。それでも楽勝で(カンファタブルに)、トレードできた

中国の1国2制度問題の解決糸口・ロードマップが見えていない、暴動が起きて観光客が呼びづらい点がダウングレードされた。

しかし、新型コロナウィルスの影響は関係ない。暴動などの方が大きく、それどころではない。つまり、今日のニュースはサイコロジー。要は、心理的なダメージの方が大きかったというもの。

アメリカのマーケットに対する影響

たぶん、今日のS&P は -0.4%ほどの小甘い感じと予想している。このところ、息抜きせず、ずんずんと伸びていた。この手のニュースには脆いセットアップになっている思ってる。目先はちょっと下げるんじゃないかな。

しかし、全体のピクチャでいえば、今のアメリカ経済は非常に良い環境だと思っている。

  1. 低金利。インフレ期待が低いということ
  2. 失業率が低い。賃金が上がり始めている為、消費者マインドは強い

アメリカのGDPが70%くらい消費で構成されていることを考えれば、アメリカ経済が、新型コロナを材料にして下げる要因にはならないと思っている

今のアメリカ経済はマルチプル・エクスパンション真っ只中にある

今のアメリカのマーケットは「マルチプル・エクスパンション」の真っ只中にある。

「マルチプル = 倍率、エクスパンション = 拡大する」の意味。要するに、PER(株価収益率) が拡大しているということ。

投資家の気持ちが大きくなっている、安心している時にPERは拡大していく。逆が「マルチプル・コントラクション」というもの。PERが小さくなること。

覚えてほしいことは、相場というものは、マルチプル・エクスパンションが起きてるときに買うこと。
気持ちが萎縮している(マルチプル・コントラクション)の局面で株を買うのは非常にデンジャラス。恐ろしいです。怖いです。止めてください。

典型的なマルチプル・コントラクションは、日本昭和のバブルの崩壊時だけども、坂道を転がり落ちるように株価は下がった。足掛け20年くらいのマルチプル・コントラクションが起きた。今の日経平均は14〜15倍くらいだろうかもしれないけど、バブルの時はPERが50倍とか楽勝にあった。

では、なぜ全降りとかしないで、マルチプル・エクスパンションの真っ只中にあると言っているかというと、マルチプル・エクスパンションは、ハイテクの大型銘柄が引き起こしている。S&P 500 の中で1番大きいのがITセクターで24% ほどを占めている。とりわけ大きいのが、APPL で4.8%ほど。MSFT 4.6% くらいを占めている。この2銘柄が、S&P500 の9%以上になる。

ビジネスモデルの変化・サブスクリプションモデルとは

APPL は 過去12ヶ月で110%くらい伸びていて、MSFTは170%近く上がってる。つまりこの2銘柄は激しいマルチプル・エクスパンションの経験中にあり、投資家からもっともっと買っても良いと思われている。

これは危険なことだとは思っていない。理由は、これらの主要銘柄のビジネスモデルが今変化しているから。

アップルのビジネスモデル変化

たとえば、アップルは毎年9月にイベントでカッコいい新製品をバーンと発表して、えいやぁーという感じでクリスマス商戦に投入するのがアップルの伝統的マーケティング手法だった。しかし、これは危なっかしい、博打だよね。

消費者に受入れられる新製品を発表できたら良いけど、不評な新製品だと売上が減っこむよね。こいう博打は止めたい。そして、サブスクリプションモデルで売りたいと、最近のアップルの経営者は考えている

つまり、ビジネスモデルを変化させていきたい。消費者とのリレーションシップが大事だというモデルに移行したいと思っている。

サブスクリプションモデルは、ハードウェアをえいやーと提供するよりも、長期にチャリンチャリンと収益を得ていくモデルを指すのだが、優れているのは後者のモデル。なぜなら、数字・収益が読めるから。
同じ1ドルでも、ハードウェアを売るよりもサブスクリプションの売る方が価値が高いと投資家は考える。

英語で「ビジビリティ」と呼び、遥かにサブスクリプションモデルはビジビリティが高い。同じものを基本的には売っているが、課金方法が変わっている為、ビジネスモデルの変化を投資家は好感している。今は流行らない

マイクロソフトのビジネスモデル変化

マイクロソフトも同様。昔はディスクにラッピングしてソフトが売られていたが、今は流行らない。Software as a Service の形でWEBを解する販売に変化している。また、Amazon の AWS に対抗するAzure は、部門成長率で2倍くらいアマゾンよりも成長している。

よって、サービスコンポーネント(サービス売上高)が全体に占める割合が増えている状態は、投資家にとって安心感を与えて、株価が大化けしている。結果、指数を引き上げている構造。

これが健全か、不健全かというと、「当然」だということ。サブスクリプションモデルは毎月月初で売上が確定しているということ。こんな美味しい商売は無いよね。心配すべきはチャーン(顧客解約率)だけ。でも、アップルは1〜2%くらいなので、全体から見るととても小さい。あまり心配することではない。

説明のまとめ

新型コロナウィルスの発生で、アジアのマーケットで下がってます。2003年のSARSの時も下がったが、アメリカに対しては影響は軽微だと思っている。

理由は、アメリカのマーケットはしっかりしており、指数が伸びているのも、APPLやMSFTのマルチプルエクスパンションが理由。これは構造的な理由であるため、新型コロナや地政学リスクが・・・などのチマチマした材料ではないということ。今日とは言わないが、むしろ買い場になる思ってる

QAコーナー

Apple Arcade、めっちゃんこ良い

そうなんですか(笑)

逆張りするなということですよね

うーん。アジアに関しては、ちょっと様子見たいなと考えてます。

アメリカに関しては。。。ひょっとしたら押したところで買いかなと思ってます。

マスターカード (MA) どうですか

はい。マスターカード良いと思います

日本で死者が出たら日経はコロナ暴落あると思いません?

そうなるかもしれないね(笑)

結構揉めたよね。2003年の時は。旅行関連株がかなりひどかったと思います。

急落の後、新興国市場は結構な買い場だった

ところで、急落の後、新興国市場は結構な買い場だった。大相場の起点だった。今回も新興国はかなり下がるかもしれないけど、今日とか、明日に買い出動しないでね。でも、半年後くらいには良い買い場がくるかもしれない。

今の資本市場の構図というと、世界のお金がアメリカに集まっている 「世界のお金がアメリカに集まっている」ということは、新興国からはお金が抜けているということ。新興国などの小さい株式市場でお金が抜けてる時に投資するのは凄く危ない。ひょっとすると香港とかそうなるかも。

まだアメリカの吸引力が強い。新興国は今じゃない。

要するに、アメリカの引力が強すぎるんですよ。

新興国でボトムフィッシングする時は、重々に用心深くなってほしい。

一般論としては、今年は11月大統領選挙でトランプ大統領が再選して、来年になって “好材料出尽くし” でアメリカが不景気になったら、比較感としてシーソーが働く。その時がグッドタイミングなんです。
つまり、今じゃないということ。今はアメリカの吸引力が強すぎる。

マルチプル・エクスパンションはいつまで続きますか

よくわからない。APPL は、27倍くらいか。16倍くらいだったけど、結構良いところまで来てるよね。
MSFT は31倍だったか。マルチプルエクスパンションはどこかで終わるかもね。

マルチプル・エクスパンションが終わる兆しはある

ちなみに、終わる兆しはある。

市中金利がグイグイ上がり始めたら、終わる。フィニッシュです、フィニッシュ。

マルチプルエクスパンションの刺客は、「市中金利」ですから。市中金利が上がり始めたら、いつまでも、のほほんんとポジションを持たずに落とすようにしてください。

以上です。