【広瀬隆雄氏】2021/2/15 ARKインベストメントの投資スタイルについて

2021年5月8日

広瀬隆雄氏によるYoutubeライブ議事メモ
2021年2月15日 ARKインベストメントの投資スタイルについて

目次

はじめに

ARKインベストメントの概要

キャシー・ウッドという女性のファンドマネージャが率いてる会社です。
僕は非常に尊敬しています。アクティブマネージャであり、久々にでてきた傾聴に値する人です。
ウォール街では、”ウォーレン・バフェット以来だ”という人がいるほど、べた褒め評価されてる人です。

キャシー・ウッドの経歴について

  • キャピタルグループ
    • カリフォルニアに拠点を持つ大手投信顧問会社
  • ジェニソン・アソシエイツ
    • 株式のアクティブ投資を得意とする投資顧問会社
    • 今は、TGIM
  • アライアンス・バーンスタイン
    • ウォール街でたくさんの委託手数料を証券会社に落としている機関
    • フィディリティと並んで最重要顧客
    • チーフ・インベスティメント・オフィサーを務めていた
    • 昔は「スタンフォード・バーンスタイン」と呼ばれていた
    • バリュー系のリサーチを得意とした証券会社
    • バリューリサーチで色々と画期的なことに取り組んでいる
    • 最近では、クォンツ的なマクロストラテジーで有名な会社
  • ARK
    • 2014年に創業

ここで挙げた会社はいずれもピカピカの運用会社です。
つまり、きちんとした伝統的な運用訓練を積んでいる人です。
経歴的には文句の付けようはありません。
リサーチという点で色々なイノベーションを起こした運用会社で、経歴を積んできた人となります。

テクノロジーの理解がARKの出発点

まず、最先端技術・テクノロジーを理解することからスタートします。
テクノロジーの理解として、ムーアの法則というものが有名です。インテルのゴードン・ムーア氏が提唱しました。半導体のコストは18ヶ月で2倍になるという法則です。
言い換えると、単位面積あたりに載せるトランジスタ数は、18ヶ月で2倍になるということ。

ムーアの法則が意味するのは、テクノロジーは、進めば進むほどコストが下がるというもの。
コストが下がることで、一般の人では手の届かなかった恩恵を得ることができます。
ある新製品や新サービスが持つインパクトの予想を立てる時、まず最初にテクノロジーをキチンと理解すること。そして、コストカーブをしっかり予測して、マーケットシェアの逆転を予測します。

ARKのスタイルは、コストカーブ、マーケットシェアを予測すること

たとえば、テスラに代表されるEVのコストです。
昔はバッテリーのコストが、ガソリンよりもずっと大きかった。しかし、バッテリーの値段が下がってきています。今だと、EV車とガソリン車の差を感じなくなってきた。将来はガソリン車が手が届かないほど、EV車のコストが下がってくることが予測されています。
まず、テクノロジーを理解します。次にコストカーブして、将来のマーケットシェアの変化を予測することが、ARKのスタイルです。

別の言い方をすると、伝統的な証券分析・株式リサーチの手法を否定しています。
たとえば、ディスカウント・キャッシュ・フローモデル(DCFモデル)などです。

ARKはオープン・カルチャー

ARKは、自分たちが考えてること、リサーチ、ファイナンシャルモデルを公開します。
TwitterなどのSNSで、担当者・アナリストも自由に発信しています。これも従来のBay・Sellサイド双方の慣習を打ち破っている点です。

2020年は圧倒的なパフォーマンスだった

ARKのファンドは5本ほどありますが、過去12ヶ月のどれも+150%など素晴らしいパフォーマンスを挙げており、ARK商品はどれもトップパフォーマーになっています。
これがいつまで続くのかというと「分からない」。続くかもしれないし、続かないかもしれない。
最後まで逃げきれるというものではありません。
彼らの分析手法が悪いからというわけではなく、ARKが住んでいる世界=破壊的な技術確認の世界が、非常にリスキーな生息場所にいるというものです。

ARKは、まだバブル崩壊を経験していない

ある革新的な技術が生まれた時、投資家に発見されます。
すると投資家は、べらぼうに高い評価を与えます。最近だとTSLAです。ものすごく株価が伸びました。
しかし、その後に “必ず” バブルの崩壊があります。
1990年代後半にはドットコムバブルが崩壊、その前には自動車バブル、ラジオバブル、鉄鋼バブル、鉄道バブル、蒸気機関バブルなどが崩壊してきました。
今回に限り、バブル崩壊しないというのは、当てはまらない。
これまで必ずバブルは崩壊してきている。
その後、ボロボロになったところで、セクターが見直される。社会から見直されてパラダイムの変革がおきると言われています。経済学者のカルロス・ペレス氏が提唱しているものです。
テクノロジーというものが、経済社会に与えるインパクトを理解する上で多くの人が扱う理論であり、特別気を照らした議論ではありません。ARKもこれからバブル崩壊を経験しないといけない。
たとえばEVは、まだ1度もバブル崩壊を経験していない。ある時点で起きるバブル崩壊も想定しておかないといけない。

ARKが投資しているセクター

EV(電気自動車)、仮想通貨・ペイメント革命、ゲノム創薬、宇宙、3Dプリンティング、AI、ロボティクスなどを中心に彼らは投資しています。
細かい話をすれば、ゲノム創薬は90年代に、3Dプリンティングも5〜6年前に人気になった。しかし、EVはまだバブル崩壊していないし、AIも弾けてはいません。
仮想通貨は3年くらい前にベアマーケットがありましたが、まだまだバブル崩壊はこれからです。

なぜ、ARKはリサーチを発信できるのか

ARKアセットはETFなんですよね。ETFはポートフォリオに組んでいる銘柄を外部化しています。
ETFそのものと、ETFに組み込まれてるバスケット(ポートフォリオ・コンポジション5)の間にある価格差をアービトラージするのは証券会社です。つまり、ETFにはトレードデスクなどが無いため、社内で発注する人はしません。社員が発信しても利益相反など不祥事が起こりにくいということです。
ETFに特化した運用会社だからだと、説明できます。

テクノロジー・イノベーションの語り部

もう1つ重要な点として、破壊的な技術革新には必ず語り部・太鼓持ちという人が必要です。そうしないと技術は理解されないし、発見もされないんです。なので、ウォール街の歴史を見ていくと、ビジネス・テクノロジーの世界を見ていくと、語り部が常に存在していたんです。

語り部① ファンドマネージャ:ジェラルド・サイ(フィディリティ)

たとえば、フィディリティのファンドマネージャに “ジェラルド・サイ”という人がいました。彼が、フィディリティの最初のスターでした。いわゆるゴーゴーファンドと呼ばれる、ファンドマネージャ自身のビジネスに対する理解、テクノロジーへの理解、個人の名声、ある種のスター性で投資信託を販売するスタイルを確立するキッカケを作った人です。

語り部② ファンドマネージャ:ピーター・リーンチ(フィディリティ)

同じく、カリスマ・ファンドマネージャとして、ピーター・リンチという人物がいました。「このビジネスが面白い」という話をオープンに発言してた人です。今、社会で起きていること、技術として何が起きているのかということを噛み砕いて話した人が、Bayサイド、ファンド・マネージャの中で存在していました。

語り部③ リサーチ・ブティック投資顧問:ビル・ハンブレット(H&Q)

1970年代で証券会社の中で、技術リサーチに特化する証券会社がたくさん出てきました。
たとえばH&Q、ロバートソン・スティーブンス、アレックスブラウンなどのブティック証券です。
証券会社が新しい技術を投資コミュニティに紹介していくのが1970年代後半から登場した新しいスタイルでした。たとえばバイオテクノロジーのジェネンテック、最初のピュア・テクノロジーであるAppleを紹介したのが、H&Qのビル・ハンブレットでした。

語り部④ ベンチャー・キャピタル:メアリー・ミーカー

その後、ドットコムブームが起こり、技術を紹介する、あるいはシリコンバレーで起きてることを紹介することが、ビッグビジネスになった。たとえば東海岸の証券会社 モルガンスタンレーのメアリー・ミーカーがインターネットについて詳しく説明することを始めた。彼女はベンチャー・キャピタルに移ってモルスタ時代と同じく、1年に1回「Internet Trains」というリサーチレポートを発信していました。
発信の主体が証券会社ではなく、ベンチャー・キャピタルに移ったという時代もあります。

語り部⑤ ベンチャー・キャピタル:フレッド・ウィルソン

2003年くらいにユニオン・スクウェア・ベンチャーズを立ち上げました。
たとえばTwitter、Etsy、Twilio、MongoDBなどを彼は手がけてきた。最近ではコインベースなどにも彼は投資しています。

現在の語り部が、キャシー・ウッド

ようは、ウォール街をリードしているオピニオン・リーダーは、Bayサイド・Sellサイドに限らず立場が入れ替わりながら発信してきました。そして、今のオピニオンリーダーが、ARKのキャシー・ウッドだということです。

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以上です。