【書評】シャーロック・ホームズ「緋色の研究」を読む

2021年5月8日

英国が生んだ世界的ベストセラー小説。アーサー・コナン・ドイル著書。英題「A Study in Scarlet」。
シャーロック・ホームズシリーズの長編小説、第1弾。1886年執筆。1887年発表。
出典:光文社文庫 訳者 日暮雅通 全237ページ。

この本は、シャーロック・ホームズのシリーズ第1弾となります。
140年前に発表されたイギリスの小説ですが、今も魅力は色褪せません。
このような方におすすめの1冊です。

  • シャーロック・ホームズが、どんな物語か知りたい
  • どれから読み始めたら良いか迷ってる
  • 以前に読んだが、ホームズの原点・盟友ワトソンとの出会いを振り返りたい

目次

「緋色の研究」って、どのような本?

今から140年前、1880年頃のロンドンを舞台に描かれたミステリー小説です。
主人公は、シャーロック・ホームズ。現代の探偵像を作り上げたとも言われます。
日本でいうと明治時代。最初は世界観がとっつきづらく感じましたが、次第にホームズの推理と事件の謎にドンドンと惹き込まれます。

著者の「アーサー・コナン・ドイルさん」は、どんな人?

本作は、著者であるアーサー・コナン・ドイルさんが27歳の時に執筆しました。
主なプロフィールをご紹介します。

  • イギリスのエディンバラ地方出身
  • ロンドンで医師として開業するが上手く行かず、手をつけていた小説業に専念
  • ホームズシリーズがヒットして大人気作家となる
  • 映画「失われた世界」などSFや歴史小説など数多くの作品を残す
  • 実際の殺人事件で、容疑者の冤罪を晴らしたこともある
  • ナイト爵を授与される

翻訳者の「日暮雅通さん」は、どんな人?

翻訳者の日暮雅通さんについてのご紹介です。

  • 1954年生まれ、青山大学卒の翻訳家
  • 日本推理作家協会、日本シャーロック・ホームズ・クラブ、ベイカー・ストリートイレギュラーズの会員

日暮雅通さんの関連著書です。様々な書籍翻訳で活躍されています。

「緋色の研究」は、どのようなあらすじ?

名コンビの出会い

ワトソン博士とホームズの出会いが描かれます。
一般には理解できない表現を使い、傲慢で自信家に描かれるホームズ。
「こいつ、大丈夫か?!」という疑心の目で見るワトソン博士ですが、才能の片鱗を見ていくうちに「こいつ、本物か?!」と変化していく様子が面白いです。

怪事件の発生、冴える捜査

ワトソン博士がホームズを認め始めた最中、怪事件が舞い込んできます。
とにかく冴えるホームズの推理。ぜひ、読んでご堪能ください。

犯人の動機、語られる真相

なぜ、事件が起きたのか。悲しみに満ちた、人生を賭けた復讐劇の動機が語られます。
前半からは謎に包まれていた真相が、後半に背景を含めて明かされます。

「緋色の研究」で登場する主な舞台

イングランド 首都ロンドン

ベイカーズ・ストリート211番地B

言わずとも知れたワトソン博士とホームズの同居地。
出会いはこの住居ではなく、とある病院の化学実験室でした。
ここで実験中だったホームズに、ワトソン博士は同居の相談で会いに行きます。
そして、出会い頭の握手にて、アフガニスタン帰りを言い当てられて、ワトソン博士は驚きます。

ブリクストン・ロード ローリストン ガーデンズ3番地

事件現場となる住所ですが、現実のロンドンには実在しません。
ただし、コナン・ドイルの故郷であるスコットランド エディンバラには「ローリストン城」と呼ぶ城があるそうです。
参考:ロンドン ローリストンガーデンズ3番地

アメリカ合衆国 ユタ州 ソルトレイク・シティ

ソルトレイクシティの開拓時が描かれます。この地での出来事が、事件に結びついていきます。

アフガニスタン

ワトソン博士は、軍医として第二次アフガン戦争(1878-1881年)に着任していました。
この戦争で受けた傷が大きく、戦線を離脱してロンドンに帰ったところから、物語は始まります。

「緋色の研究」の個性的な脇役たち

スタンフォード氏

ホームズとワトスン博士を引き合わせた人物。ワトスン博士がセント・バーソロミュー病院に勤めしていた時の助手。ホームズとは実験室で顔を合わせる程度。彼がワトスン博士にうしろから肩をポンポンと叩いて声をかけなければ、この物語は始まらなかったでしょう。

レストレード警部 & グレグスン警部

今回の事件を担当する警部。たびたびホームズを訪ねては、アドバイスを得ている様子。事件のきっかけはグレグスン警部からホームズに宛てた手紙。2人の警部はライバル関係にあり、「この2人が担当するなら、きっと面白いことになる」として、ホームズは皮肉を持ちつつ、事件に向かいます。

ウィギンズ少年と5人の少年

ホームズの指示によって動く宿なし少年団。ウィギンズ少年はその中のリーダーで描かれる。
彼らがホームズのどのような指示で動くのか、注目です。

読書後の感想まとめ

犯人逮捕までの流れにはすごく惹き込まれます。この場面だけで何度も読み返しました。
また、タクシーの先祖と呼ばれる、辻馬車(ハンサム・キャブ)での移動、アメリカ史でみるゴールドラッシュも重ねつつ、当時の宗教観やフロンティア思想など、歴史資料としても興味深く読めます。

最後に印象に残った、ホームズのセリフです。
ロジカルシンキングを見事に表現しており、とても参考となりました。

たとえば、一連のできごとを聞かされれば、その結果がどうなるかはたいていの人に分かるだろう?
ところが逆に、ある結果を聞かされて、その結果が出るまでにどんな段階を経てきたかを論理的に推理できる人はほとんどいない。これがぼくの言う、あと戻りの推理、つまり分析的な推理というやつだ

新訳シャーロック・ホームズ全集 緋色の研究 アーサー・コナン・ドイル 日暮雅通=訳 より。